三焦経から黄耆をたどる
- 備忘録 東洋医学
- 7月16日
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補気の要薬といえば黄耆ですが、その守備範囲は虚労から水腫、脳梗塞後遺症、重症筋無力症、腎臓病まで広く、まるで一人で何役もこなす万能選手のようです。ひとつの臓腑ではとても説明しきれません。本稿では黄耆建中湯・防已黄耆湯・補中益気湯・玉屏風散・補陽還五湯・参耆地黄湯といった処方の方意をたどり、時代とともに広がってきた薬能を整理します。その多彩さを一本の糸で束ねる鍵が「三焦」です。形はあっても実体のない腑と長らく軽んじられてきた三焦が、近年ヒト最大の器官として発見された「間質(インタースティシウム)」と見事に重なり、古人の直感に現代解剖学がようやく追いついた——そんな逆転劇がここにあります。黄耆はこの三焦すなわち間質を介して全身に作用すると読み解けるのです。さらに三焦と表裏をなす心包をリンパ系の働きととらえ、赤い水である血液と白い水であるリンパという二つの流れから、水をめぐらせる肺・脾・腎の協働を考察します。ここで三焦と心包の概念をあらためて整理します。三焦は気と水の通り道とされ、肺・脾・腎が上・中・下でその流れを制御する場ですが、これを西洋医学的にいえば、全身の細胞のすきまを満たして水と物質をやりとりする「間質(インタースティシウム)」にほかなりません。一方の心包は、従来は心を包んで守る膜とされてきましたが、本稿では一歩踏み込んだ私説を示します。すなわち心包とは、心臓から全身の血管・臓器までを網の目のように包み、圧の格差を利用してリンパ液を律動的に送り出す、リンパ系そのものの働きではないか、という見立てです。間質(三焦)が水を蓄えて動力を供給し、リンパ系(心包)がそれを律動的に運ぶ——両者は表裏一体となって全身の水の輸送を支えていると読み解きます。

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