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むくみを問う

  • 執筆者の写真: 備忘録 東洋医学
    備忘録 東洋医学
  • 9月8日
  • 読了時間: 3分

更新日:11月9日

むくみ

阪神医療生活協同組合 第三診療所

所長 澤井一智

むくみ(浮腫・水腫)の病理機序は、西洋医学的には①毛細血管内圧の上昇、②低アルブミン血症、③リンパ管の閉塞・間質の浸透圧の上昇、④毛細血管の透過性亢進、⑤他の薬剤(機序不明)に分類されるが、東洋医学的には、腎・脾・肺・三焦の失調により生じると理解される。日本漢方の分類では、水腫には実腫、虚実間腫、虚腫があり、実腫に使用する代表的方剤には、分消湯、五苓散、導水茯苓湯、茵蔯蒿湯、桂枝茯苓丸、越婢加朮湯、虚種に使用する代表的な方剤には八味丸、真武湯、茯苓四逆湯、防已黄耆湯、補中治湿湯がある。中医学的には表・実・熱証を呈する陽水と、裏・虚・寒証を呈する陰水に分類され、治法もそれぞれの臓腑と病態に応じた生薬の組み合わせを行う。陽水の病態とその治療法として、①風水氾濫に対する越婢加朮湯加浮萍・沢瀉・茯苓等による散風清熱・宣肺行水、②湿毒浸淫に対する麻黄連翹赤小豆湯合五味消毒飲等による宣肺解毒・利湿消腫、③水湿浸漬に対する五皮飲合胃苓湯等による健脾化湿・通陽利水、④湿熱壅盛に対する疏鑿飲子等による分利湿熱がある。陰水の病態とその治療法として、①脾陽虚衰に対する実脾飲等による温運脾陽・以利水湿、②腎気衰微に対する牛車腎気丸合真武湯による温腎助陽・化気行水がある。三焦は長らく現代解剖学には相当する臓器はないと考えられていたが、近年Structure and distribution of an unrecognized interstitium in human tissues. Sci Rep 2018; 8: 4947やEvidence for continuity of interstitial spaces across tissue and organ boundaries in humans. Commun Biol 2021; 4: 436に報告されているように、全身の臓器(皮膚、食道、胃、胆嚢、膵臓、小腸、大腸、肺、筋膜、動静脈周囲)をつなぐ組織間隙である可能性が高いことが示されている。つまり、むくみは組織間隙に過剰な水分が貯留した状態で、三焦のミクロ構造とマクロ構造における水分の貯留と考えられる。正常状態では、静脈による環流と、組織間隙のインテグリン・コラーゲン複合体による圧縮力と、リンパ管のポンプ作用により、組織間隙から過剰な水分が除去されている。炎症や外傷などの病態では、炎症性サイトカインがインテグリン・コラーゲン複合体を分解し、炎症で産生されたNOが集合リンパ管の平滑筋収縮を抑制しポンプ作用を失調させ、腎交感神経の活性化がナトリウムや水の貯留を促進し、浮腫が形成される。漢方薬は、ナトリウム利尿ペプチド・アクアポリン・バゾプレッシンV2受容体の調節を介して浮腫を軽減すること、また炎症性サイトカインの抑制、NOの抑制、交感神経活性の抑制などの作用を持つことが、現代医学的な薬理作用として多数の論文に報告されている。通調三焦水道の方法論として、たとえば①肺には、肺気を開く桔梗・麻黄、粛降を促す石膏・杏仁・桑白皮を使用し、②脾胃には、炮附子で脾腎の陽気を補い、乾姜・草果で脾陽を補い三焦気化を高めて白朮・茯苓・檳榔子・厚朴で胃気を下ろし、③腎膀胱には、炮附子で温腎化気し、白朮・茯苓で利水滲湿し、腎膀胱に鬱した水湿には川牛膝・車前子・滑石などで尿に導き、④肝には、当帰や白芍で柔肝しながら柴胡や香附子で疏肝する逍遙散を加減して使用し、⑤三焦には、甘遂・芫花・大戟・商陸・牽牛子・巴豆などの逐水薬を用いるが、現代医学的な漢方薬の作用機序の報告は、漢方薬が腎・脾・肺のみならず、三焦に直接作用して浮腫を軽減する機序を示唆していると考えられた。


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