不問診からはじまる問診
- 峯 尚志
- 2024年8月29日
- 読了時間: 3分
更新日:6月3日

診断に対する情報を患者さんとの対話によって引き出すという意味では、東洋医学の問診も西洋医学の問診も変わりはない。患者さんの主訴を聞き、現病歴、既往歴、家族歴、生活歴などを聴いてゆく。
東洋医学の問診でまず大切なのは、望診という大きな器の上に問診があるということである。
東洋維医学的問診では、まず望診によって治療者が感じたことをベースに、患者さんの全体像を把握するために開いた質問を多用する。
「今日はどうなさいましたか」と開いた質問から始まるわけであるが、そのときにはすでに患者さんに問う前に、望診によって不問診で感じた患者さんのいろいろな情報が含まれている。
そこでまず、患者さんが訴えたいことを聴いていった後に、不問診の中で得た情報で特に気になることを聴いてゆく。
生活の中で、どのようなストレスや問題を抱えているかは大事な問診項目となることが多い。
東洋医学に於いて病は、身体にとって毒となる邪気とその人のもつ固有の自然治癒力との邪正闘争によって形成されると考えられている。
望診で首肩の凝りが感じられたら、「どんなお仕事をされていますか」という質問の優先度は高まる。オフィス作業で一日中座って目を酷使しているのが、農業による肉体の酷使により首肩腰が凝り詰めているのか、患者さんの生活の中で病態を把握する。
しんどくて朝起きれないと言っている表情に怒りの感情が含まれていたら、その怒りの対象が誰なのか、家庭なのか、職場なのか、生徒なのか、担任の先生なのかを聴いてゆく。
時には自分自身が怒っていることにさえ気がついていないことがあるので、問いかけながらも患者さんの表情を見ながら、問診の答えを引き出してゆく。
患者さんのもともとの体質的傾向は西洋医学ではあまり問題にしないが、東洋医学では、患者さんの持つ正気(自然治癒力)に拘わることなので、丁寧に聴くことが多い。
汗の臭気、出る部位、時間帯。排尿の回数、勢い、色、臭い。排便の回数、堅さ。婦人なら滞下の量や、粘り気、臭気、月経の周期や、色や塊の有無。月経前後の症状など月経随伴症状も丁寧に聞いてゆく。また気候の変化に敏感で、多彩な自律神経症状を呈する場合もあるので、外因である風、寒、暑、燥、湿、火邪の六淫に対する身体の反応がないかを詳しく聞いてゆく。
胃腸が弱く昼食を食べた後眠くなる、疲れやすく手足がだるくなる、疲れた時少し休むと動けるが、すぐにダウンし持続力がない(気虚)、皮膚につやがなく、頭がぼーっとしたり、目がかすんだり、めまいがしたりする(血虚)、痩せてのぼせやすく、いらいらしやすく、耳鳴りがする(陰虚)寒さに弱く、手足が冷たく、薄い小便が出て、足がむくみやすい(陽虚)など、患者さんから得た情報によって患者さんの体質傾向が分かり、漢方的診断と治法の助けになる。
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