不問診からはじまる問診
- 峯 尚志
- 2024年8月29日
- 読了時間: 3分
更新日:11月9日

診断のための情報を患者さんとの対話から引き出すという点においては、東洋医学の問診も西洋医学の問診も基本的には変わりありません。患者さんの主訴をうかがい、現病歴、既往歴、家族歴、生活歴などを順に聴いていきます。
東洋医学の問診でまず重要なのは、問診が「望診」という大きな器の上に成り立っているという視点です。
東洋医学的な問診では、まず望診によって治療者が感じ取った情報を基に、患者さんの全体像を把握するために開かれた質問を多く用います。「今日はどうなさいましたか」といった問いかけから始めますが、その段階で既に、望診によって得られた“問わずして得た情報”が問診の土台となっています。まずは、患者さんが話したいことを丁寧にお聴きし、その後に不問診の中で気になった点について掘り下げていきます。
生活の中でどのようなストレスや問題を抱えているのかは、問診の中で重要な項目になることが多いです。東洋医学では、病とは身体にとっての異物である邪気と、その人自身が持つ自然治癒力である正気との「邪正闘争」によって生じると考えます。
たとえば、望診で首や肩のこりを感じ取った場合には、「どのようなお仕事をされていますか」といった質問の優先度が高まります。オフィス作業で長時間座って目を酷使しているのか、それとも農作業などで肉体を酷使しているのかによって、首肩腰の凝りの成り立ちが異なり、生活背景から病態を読み取っていきます。
また、「朝起きられない」と話す患者さんの表情に怒りの感情が見えた場合には、その怒りの対象が家庭なのか、職場、生徒、あるいは担任の先生なのかを丁寧に聴いていきます。時には、本人すら怒りを自覚していないこともあるため、表情を観察しながら問いかけ、答えを引き出すことが求められます。
体質的傾向については、西洋医学ではあまり重視されませんが、東洋医学ではその人の正気、すなわち自然治癒力に深く関わるため、丁寧に伺います。たとえば、汗のにおいや出る部位、時間帯、排尿の回数や勢い、色、におい、排便の回数や硬さ、さらに女性であれば帯下の量や粘り気、におい、月経周期、経血の色や塊の有無、月経に伴う諸症状についても詳細に確認していきます。
また、気候の変化に敏感で、自律神経症状が多彩な場合には、風・寒・暑・燥・湿・火といった外因(六淫)に対して身体がどう反応しているかを詳しく聴き取ります。
胃腸が弱く昼食後に眠気が強くなる、手足がだるく疲れやすい、少し休めば動けるが長続きしない(気虚)、皮膚に艶がなく、頭がぼんやりしたり、目がかすんだり、めまいがする(血虚)、痩せてのぼせやすく、イライラや耳鳴りがある(陰虚)、寒がりで手足が冷たく、尿が薄くて足がむくみやすい(陽虚)といった体質傾向は、患者さんから得られる情報によって明らかになります。
こうした体質傾向の把握は、漢方的な診断や治療法の選定において非常に重要な手がかりとなります。
問診においてもそれに先立つ望診が大切であることを覚えておきたいと思います。望聞問切の四診は望診に始まり望診に還り、四診合算して漢方的診断に至るのです。
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