動悸を問うー望聞問切から処方へー
- 備忘録 東洋医学
- 9月8日
- 読了時間: 3分
更新日:11月9日
今回より、中医学の弁証論治をとりいれて症候別に漢方治療を考えていきます。今回はその第一回として動悸を取り上げました。
動悸は、自律神経の症状としてひろく見られる症状ですが、患者さんが動悸を訴えて来院された場合、まずは器質的疾患がないか、とりわけ直ちに西洋医学的加療が必要な病態、たとえば心筋梗塞、大動脈解離、致死的な不整脈などがないかを鑑別することが重要です。また頻脈性の心房細動などβブロッカーやカテーテルアブレーションの適応疾患も鑑別して置く必要があります。甲状腺機能もチェックしておくとよいと思います。その上で、漢方治療の適応を判断することが重要となります。
中医学的に動悸を分類すると、動悸は心悸、驚悸、動悸、心悸亢進などといわれ、心気虚、心陽虚、心血虚、心陰虚の不足の病態とその病因から驚恐擾心、心血瘀阻、痰火擾心、水気凌心、肝陽上亢、心腎不交などに分類されます。ところが循環器内科で漢方医である山崎武俊先生によると、器質的疾患のない心臓神経症などの患者さんに一番有効な処方は半夏厚朴湯という気の鬱滞に用いる処方なのです。この処方は上記の分類にはなく、私の造語になりますが気鬱憂心という分類を加えました。いきなり中医分類の不十分さを感じてしまいました。
さて心気虚、心血虚、心陽虚、心陰虚という上記分類を生薬の組み合わせから論じてみようと思います。まず動悸、息切れに共通の組み合わせとして心気、心陽を補う桂枝―甘草の組み合わせが基本になります。これに利水安神の茯苓を加えることも多いです。処方では苓桂朮甘湯や、桂枝加竜骨牡蠣湯を使います。気のエネルギー不足は気虚といわれ、人参、黄耆を加えます。また心の概念は心臓のポンプ作用と別に心(こころ)という精神活動も含んでいます。血の栄養作用が足らない状態を血虚といい、頭がボーとしたり、ふらついたり、不安や不眠を感じるようになります。このような症状がでたら、血を補う当帰や安神作用をもつ竜眼肉や酸棗仁などの生薬を加えます。処方は帰脾湯を用います。また身体のエネルギー不足や寒冷刺激によって手足や身体の冷えを感じる状態は陽虚と言われます。陽虚証に対しては乾姜や附子といった温める力の強い生薬を使います。処方は真武湯を併用するとよいと思います。また身体の中の体液や細胞液、血液が不足した状態を陰虚といい、陰虚があると、冷えと逆の症状がでます。すなわち手足がほてったり、胸が熱くなったり、のぼせたり、興奮して眠れないなどの症状がでます。或いは滋養不足の結果不整脈がでます。このような時は、滋陰作用のある地黄、阿膠、麦門冬などの生薬を加えるのです。処方は黄連阿膠湯や炙甘草湯を用います。本編のパワーポイントにはこれらの生薬の使い方を一枚の表にしておりますので参考にしていただきたいと思っています。
最後に強調しておきたいのは、気鬱、気滞を治す半夏厚朴湯という処方の有効例がおおいこと、動悸に直接関係しない香附子や紫蘇葉といった気鬱や気滞ををはらす生薬、半夏、厚朴といった化痰の生薬が、治療の鍵となることがあることも忘れずにおきたいと思います。

コメント