桂枝加竜骨牡蛎湯の運用において 糸の切れた風船の話
9月23日
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更新日:9月27日
桂枝加竜骨牡蠣湯の病態は、「糸の切れた風船」という比喩がいちばんよく表します。先天の元気である肾が弱り、心陽を繋ぎとめられなくなって、陽がひとり上に浮く。本稿は三つの症例からこの方の運用を考えます。
『金匮要略』は失精家について、小腹弦急、陰頭の冷え、目眩、脱毛、脈は極虚・芤遅と記します。処方は桂枝湯に竜骨・牡蠣を加えたもの。桂枝が陽を温通し、芍薬が陰を補い、鉱物の重みが浮揚した陽を潜鎮します。指一本で風船の浮力を押さえるような、絶妙なバランス調整です。
症例1は35歳女性。突然の動悸と「息が吸えない」感覚で救急を受診するも異常なし。痩せ型で頬がうっすら上気し、脈は弦細数、腹直筋緊張あり。桂枝加竜骨牡蠣湯に眠前の酸棗仁湯を加え、呼吸法と息抜きの指導を併せて、半年で「ようやく元の自分に戻れた」と報告されました。
症例2は56歳男性。陰部の冷えと左耳鳴り。沈細の脈、臍下不仁。桂枝加竜骨牡蠣湯を処方すると、わずか3日で冷えが消え、頬の上気もとれました。本治として六味丸に杜仲・釣藤鉤を加え、3か月後には耳鳴りも完全に消失しています。
症例3は85歳女性。入院中、夜になると糸の切れた風船のようにふわふわと徘徊がはじまり、朝には記憶がありません。頬にほんのり赤み、腹力1/5、臍下不仁。同方を処方したところ3日で徘徊が消え、良眠と夜間の見当識が戻りました。
運用の要は、頬の上気・腹直筋緊張・臍下不仁という虚陽浮揚の徴を見極めることです。標治で浮いた陽を潜鎮し、本治には補肾処方を重ねる。そして呼吸法や睡眠衛生といった、地に足をつける生活の工夫を並行させること。

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