橘窓書影を読む2-051〜070
橘窓書影を読む2-51〜70
今回の症例の概要は以下の通りです。2−51〜70までの20症例を学びます。2−54には安政五年の麻疹大流行の記録が附されており、本巻の中核をなしています。詳しい症例の提示と考察については本編をご覧ください。
| 症状・病態 | 治療内容 | 転帰・考察 |
2-51 | 心労後の胸膈痞塞と心下堅塊。時気に感じて発喘し倚息して臥せず、冷汗・不食 | 外台の柴胡鼈甲湯、上迫の甚だしい時は麻黄甘草湯を兼用 | 数日で喘気収まり数月の苦患全治。喘を診て腹を治す |
2-52 | 血熱の激烈な頭痛。両目脱せんとし嘔吐、冷水を欲す。発表して増悪 | 竹皮大丸料。石膏・鉛丹・薄荷精を冷水にとき額から眼窩へ外用 | 一昼夜で頭痛大減、飲食進む。内は清熱、外は冷却の併用 |
2-53 | 胸膈の攣痛と腰脚拘急で屈伸不能。脈沈弦、脇下鞕満して拒按(懸飲) | 十棗湯で攻下→延年半夏湯、大陥胸丸を兼用。茴香桂枝甘草当帰の煎汁で熨す | 攣痛去り屈伸常に復す。「熨蒸の功、内薬の右に出ることあり」 |
2-54 | 参府途上の痢疾。日夜七、八十行の下痢と後重、寒熱往来・嘔吐・虚脱 | 大柴胡湯で二日下す→黄芩加半夏生姜湯。平素の腹候に四逆散加呉茱萸茯苓 | 七、八日で下利治癒。「虚すと雖も何ぞ補渋を事とせんや」。安政の麻疹大流行の記録を附す |
2-55 | 左脚の攣痛で歩行難、時に胸痛と下痢。後に左脚の肉脱と脱力 | 桂枝加朮苓附湯、胸痛時に高良姜湯。回復期は八味丸加木瓜鹿茸 | 痛み去り、残った筋萎縮も長服で全愈。急性期と回復期を分けて設計 |
2-56 | 麻疹後の高度な健忘(日時も姓名も記せず)と眩暈。数月の治療も無効 | 外台の竜骨湯、妙香散を兼用 | 数旬で眩暈止み記性自然に復す。熱病後の心神失養と読む |
2-57 | 麻疹後の気鬱で言笑を欲せず。腹裏拘急・心下痞硬・不食、両脚は削小攣急 | 舒筋温胆湯→抑肝散加芍薬羚羊木瓜、済生腎気丸を兼用 | 脚気の誤診を「気疾」と正して全癒。関宿侯の妾も同方で全治 |
2-58 | 麻疹後の脚気衝心。両脚痿弱・小腹不仁・激しい動悸・小便不利・気息衝心 | 沈香降気合豁胸湯→回復期は加味四物湯加羚羊角 | 四、五日で利尿を得て気息解し、数月で平復。急性期は水、回復期は血 |
2-59 | 麻疹後の脚気。水気が去った後も痿躄して起つことができない | 加味四物湯、虎脛骨丸を兼用 | 全治。浮腫が引いても神経障害は残るという経過を2-58と対で示す |
2-60 | 麻疹中の痢疾。赤白の腸垢が日夜数十行、口中赤爛・脈虚数・虚脱 | 白頭翁加甘草阿膠湯を連服→八珍湯加天麻で調理 | 旬余で便常に復し、数旬で全治。麻疹による免疫低下下の腸管感染 |
2-61 | 麻疹後の下利止まず、腰以下は痿弱して起歩できない | 真武湯で下利を止め、残った痿弱に済生腎気丸 | 数月かけて起歩常に復す。熱利ではなく陽虚水泛の下利と鑑別 |
2-62 | 麻疹の最中に分娩し疹が没して出でず。飲食日に減じ、ほとんど瘵状 | 六君子湯合当帰補血湯→遍身の痒みに四物湯加荊芥、苦参丸を兼用 | 肌膚滋潤して回復、小疹も治癒。「血脱には気を補う」の理 |
2-63 | 心下痞塞・任脈の拘急・動悸不眠、時々吐血。滋補の剤では効かず | 四逆散加黄連茯苓、黄連解毒散を兼用 | 数旬で宿疾漸愈。腹候から「虚証にあらず、肝火の所為」と断ず |
2-64 | 左脇下の塊癖。時々攣痛し、咳逆と盗汗を伴う(澼飲) | 四逆散加鼈甲茯苓→便秘と攣痛が残り大柴胡湯加鼈甲甘草へ | 塊癖減じ大便快通、攣痛去る。鼈甲を軸に土台の方だけ差し替える |
2-65 | 冬の外感が遷延。脈数急・舌上黒胎・譫語煩乱、夜は狂の如く煩躁 | 発散も瀉下も無効の後に黄連阿膠湯→余熱に升陽散火湯去人参加生地黄 | 一昼夜で安眠、翌日には意識清明。二つの失敗が病位を絞り込む |
2-66 | 外感後一年余の微熱・盗汗・動悸・目眩耳鳴・肩背強急。頭に大石、耳に大鐘 | 柴胡桂姜湯加黄耆鼈甲→熱解後は同方加呉茱萸茯苓、六味地黄丸加鍼砂を兼用 | 諸証全愈。治療目的の移行に合わせて加減を組み替える |
2-67 | 傷寒中の大量下血(豚肝様・漆黒の塊)。四肢厥冷・冷汗・喘鳴で絶えんとす | 黄土湯で止血→その後の発熱・譫語に升陽散火湯 | 下血止み四肢温まり漸次快復。2-65で増悪した方が本例では奏効 |
2-68 | 六十歳、数年の倦怠・不食・意欲低下。脈沈細、腹虚濡、他に苦しむ処なし | 退隠させたうえで補中益気湯加芍薬茯苓を長服 | 数旬で治癒。「退きて静養するに如かず」=環境を変えることが根治療法 |
2-69 | 心下痞硬と数日止まぬ下痢。腰以下は削小し筋脈攣急して歩行不能 | 甘草瀉心湯で下痢を止め、八味地黄加鹿茸木瓜丸を兼用 | 下痢止み回復期の脚弱も全愈。寒熱錯雑の「胃中不和」と読む |
2-70 | 気鬱。終日沈黙・終夜不眠・食に味なく、時々胸中に迫り心気不定 | 温胆湯加遠志酸棗仁で安眠を得る→帰脾湯加地黄(玄帰脾湯)で調理 | 数日で安眠、その後全愈。まず不眠を断つことを回復の起点とする |

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