top of page

第17回腹証奇覧・奇覧翼を読む 五苓散他

  • 執筆者の写真: 備忘録 東洋医学
    備忘録 東洋医学
  • 7月30日
  • 読了時間: 3分

更新日:11月9日

腹証奇覧・奇覧翼

今回の処方

五苓散、茵陳五苓散、茯苓杏仁甘草湯、

瓜呂薤白白酒湯、(木防已湯)、朮防已去茯苓芒硝湯


今回は利水剤の代表である五苓散と、循環器疾患に用いられる処方の解説になります。

狭心症様の疼痛は、漢方では『胸痺』の病と言われます。胸が塞がる感じがしていたんだり、痺れたりする症候を呈します。心下部は胃のあるところで、胃の痛みとして感じる場合もあります。東洋医学では胸痺の病因は痰結、あるいは痰瘀互結証としております。動脈硬化による粥状のプラークも『痰』と考えられますので、冠動脈の粥状硬化と血流障害を痰結、痰瘀互結証とするのは、なるほどと思います。

瓜呂薤白白酒湯は祛痰散結、寛胸理気の栝楼仁が主薬で、辛温通陽、行気止痛の薤白が補助し、白酒は通陽行気を助ける。全体で胸陽を宣通し痰濁を除き、気機を舒暢させて胸痺を解消します。文礼の腹診図では鎖骨周辺と脇にに色を塗っており、起坐呼吸をして呼吸の苦しい様を描いています。この図からみると、文礼は狭心症だけでなく、長患いの心臓喘息にもこの処方を応用していたことがうががえます。

 心不全に用いる漢方として木防已湯があります。膈関の支飲といって、胸郭や縦隔に痰飲があり、喘鳴、胸苦しさがあり、顔色が悪い者に用いるとされ、心不全に用いる処方です。再度悪化した場合は木防已去石膏加茯苓芒硝湯を与えます。君薬の木防已はオオツヅラフジの根で、鎮痛作用とともに利水退腫の作用がありむくみに有効な生薬です。防已と石膏の組み合わせは麻黄と石膏の組み合わせのように利水作用を強める可能性がありそうですが、石膏は長期に使用すると胃腸障害を来すので、石膏を除いた木防已去石膏加茯苓芒硝湯という処方ができたのかもしれません。

 茯苓杏仁甘草湯は健脾利水の茯苓を君薬とする処方です。胸満、息苦しさを訴える木防已湯証の虚証に用いられます。薬味が少なく、気味が薄いので飲みやすく続けやすい処方です。胸の真ん中の壇中からみぞおちまでの痞えを目標とします。

 さて利水剤の代表処方である五苓散です。五苓散は口渇、小便不利と心下部の痞えと臍の上の水分穴の圧痛が目標となります。感染性胃腸炎による下痢や水逆といわれる嘔吐、二日酔い、めまい、浮腫、雨の前の頭痛に著効します。ところで五苓散は利尿剤ではなく利水剤という言い方をします。利尿剤は生体が脱水の時も水であふれているときも同じように尿を出します。一方利水剤は脱水状態の時は尿をとめ、溢水状態の時は尿を出します。そこで五苓散は利尿剤と言わずに利水剤、水分代謝改善剤と言われるのです。生体の状態によって尿を出したり止めたりするところに漢方薬のすごさを感じます。五苓散は生物界に広く存在するアクアポリンを介した水分代謝調節作用を持ちます。近年は慢性硬膜下血腫、脳浮腫、慢性心不全など五苓散の応用はますます広がっています。


コメント


bottom of page