腹満を問う

今回は腹満という曖昧な症状について考えてゆきます。自覚症状としての腹満は、皮下脂肪、内臓脂肪、腹壁の硬さ、腸の内容物、腸の蠕動運動、腸管の血流、腸内細菌などによって規定されます。東洋医学的には患者さんの寒熱虚実に基づいて弁証していきます。

虚証は脾虚、脾陽虚、脾気陰両虚のもとに、脾の機能を改善する四君子湯、人参湯、啓脾湯の加減が使用されます。厚朴生姜半夏人参湯は、脾虚の処方に厚朴という理気薬を組み合わすことで、虚証の気滞を治します。厚朴は虚証にも実証にも使用される生薬です。

一方、実証は芍薬、厚朴、枳実、大黄の組み合わせで腹部の気滞を瀉します。芍薬、枳実の組み合わせは、大柴胡湯、四逆散で、厚朴、枳実、大黄の組み合わせは承気湯類となり、腹部のガスを瀉します。

難治性の腹満で考えておくべきことは血流の改善で、桃核承気湯、通導散などの駆瘀血の処方は大黄で便通をつけるとともに腸管血流を良くして腹満を治します。また腸管の瘀血は冷えによって悪化するため、裏寒を治す大建中湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯も腹満の治療に有効な場合があります。

また、ガス産生に関しては、腸内細菌のバランスが大切な要素であることを付け加えておきたいと思います。