頭痛を問う
- 備忘録 東洋医学
- 9月8日
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更新日:11月9日
時は三国志の時代、魏の曹操は激しい頭痛に悩んでおりましたが、誰も早々の頭痛を治すことができませんでした。そして華陀という名医だけが早々の頭痛の痛みをとることができたので、曹操は華陀をお抱えの医師としました。しかし、華陀には多くの民を治療したいという志があり、妻の病気と偽って故郷に帰っていきました。怒った曹操は華陀をとらえ自分の治療だけをするように迫りましたが、華陀の意志は固く、曹操は華陀を処刑してしまいました。その後も曹操の頭痛は続き、激情にかられ、華陀を殺してしまったことを死ぬまで後悔したとのことです。
頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に分けられます。一次性頭痛には片頭痛、群発頭痛、緊張性頭痛や三叉神経痛などがあり、二次性頭痛というのは、何らかの疾患があってそれに伴って頭痛を自覚する病態です。早々の頭痛は片頭痛或いは、より程度の強い群発頭痛だったものと思われます。
今回は一次性頭痛、特に片頭痛と緊張性頭痛を中心にお話をしていきます。片頭痛は突然おきる拍動性の頭痛で、多くは片側でズキンズキンと痛みます。音や光に敏感で、暗い部屋でじっとしていたいといわれます。動くと痛みが増強するのが特徴です。また頭痛の前にギザギザした光が見えたりする(前兆)場合があります。これがあるとほぼ片頭痛と診断されます。片頭痛は脳内のセロトニンの減少と関係が深いと言われ、近年トリプタンというセロトニンに似た物質が開発され、臨床応用されています。また、脳内セロトニン欠乏にともない三叉神経からCGRPという痛み物質が分泌されることがわかり、抗CGRP抗体の注射薬が片頭痛の予防と治療に応用されています。また一部のカルシウム拮抗薬に片頭痛の予防効果が認められ、予防投与が認められています。
このように片頭痛の治療は確実に進歩しているのですが、それでも完全に片頭痛を抑えることは難しく、副作用や経済的負担の面からも、まだ人類は片頭痛を克服したとはいえない状態です。そこで漢方の出番があるわけです。片頭痛に効く漢方は呉茱萸湯という処方が有名です。また片頭痛患者さんは天気予報ができると言われるように、雨のまえになると片頭痛が起きやすいとも言われています。このような患者さまには、五苓散という漢方が著効することがあります。五苓散は身体の水分代謝を改善する作用があり、片頭痛の痛みの軽減と予防に有効な処方です。また片頭痛の誘因としてストレスや、月経周期にともなう体調の変化が影響する場合があり、このような場合、月経を整える漢方が片頭痛を軽減、予防するのに役立ちます。随って、患者さんの体質や環境要因から来る体調の変化を整える漢方が、片頭痛の鎮痛や予防に役に立つことがあります。
次に緊張性頭痛について述べます。緊張性頭痛は筋緊張性頭痛とも言われ首肩の凝りから頭痛を起こします。NSAIDといわれる消炎鎮痛剤が奏功しますが、原因となる凝りを緩和するわけではなく、対症的であり根治療法とはいえません。つまりそもそも何故頭痛につながるような凝りが生ずるのかを考える必要があるのです。緊張性頭痛の漢方を治療を凝りの原因から考えて見たいと思います。原因として以下の4つをあげてみます。
骨の使い方、2.筋肉の使い方、3.臓器の使い方、4.脳とこころの使い方
骨の使い方骨格のゆがみがあると特定の筋肉に負担がかかり凝りが生じます。この場合薬物療法は無効で姿勢や骨の矯正が必要となり、整体などの徒手的療法が必要となります。
筋肉の使い方 骨のずれとも関係しますが、たとえばVDT労働などに伴ない、首肩のの筋肉に凝りが生じます。単純な首肩の凝りであれば葛根湯の加減法を用います。
臓器の使い方 胃腸の虚弱といった体質的な要因に、暴飲暴食などによる胃腸や、肝胆膵への負担によって凝りが生じます。生活の改善の指導とともに、食べ過ぎには平胃散、飲み過ぎには茵陳五苓散などを使って凝りのおおもとにアプローチします
脳とこころの使い方 現代のストレス社会ではこの問題はたいへん重要です。ストレスは身体をかたくして頭痛はじめいろいろな障害を引きおこします。日本人は真面目で気鬱の傾向が、疏肝作用のある柴胡桂枝乾姜湯、柴胡桂枝湯などの柴胡剤が気の巡りをよくして身体の緊張から来る頭痛を緩和します。
本編では中医学の弁証論治にも触れて、頭痛の漢方治療について解説して行きます。
最後に、メタボリック症候群に伴う頭痛と、重症の薬物乱用性頭痛の患者さんの症例を報告します。
漢方治療は、片頭痛、緊張性頭痛はじめ、頭痛の病態を考えるとき、患者さんの体質や環境因子にも目を配り、五臓六腑や、気血水の相互関連を整えることで患者さん一人に合った、きめ細かい、より本治に近い頭痛の治療ができるものと考えています。

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